第6回 「姉さまへ」

まずは、全く見ず知らずの私が、あなたを「姉さま」などと馴れ馴れしくお呼びすることをお許しください。ただ、あなたに対する、他の方々に対する「大好き」とは格段に違う「大好き」を表現するには、これしか思いつかなかったので…。

「出会うは別れの始まり」といいますが、あなたが私より10歳以上年上ということを差し引いても、あなたとのお別れが、このような形になるとは想像もしておりませんでした。雑誌やTVからの聞きかじりだけで、こんなことを書くべきではないと思いますが、激痛と、薄れゆく意識の中で、第2・第3の事故が起こらないよう懸命に尽力したあなたは、本当に立派な方だったと心から思います。

この文は、1ファンとして、本当ならば、ニュースを聞いた直後に書くべきだったかもしれませんが、正直、この数週間は、いわゆる「姉さまロス」でした。とは言え、世間様に対し、親兄弟や親せきならまだしも、「大好きな声優さんが亡くなられたのでしばらく何も出来ません。」などと言うわけにもいかず、自発的なことも、義務的なことも全部ひっくるめて、様々な日々の営みに自らを埋没させることで、ようやく、あなたへの想いを書き残そうという気持ちになれました。

あなたと初めてお会いしたのは、「ペリーヌ物語」でしたね。でも、当時、未就学児童だった私は、「テレビマンガ」という言葉は知っていても、「アニメーション」とか「声優」とかいう言葉自体を知らなかったので、ペリーヌをあなたが演じていたということを知ったのは、随分と後のことでした。
数年前、テレビの再放送で、同作品を鑑賞しました。放映当時は高校生で、制服姿で収録スタジオに通っていたというあなたの、初々しさの中に間違いなく光るものを感じさせる演技に、魅了されました。

その後、いくつかの作品であなたとは何度もお会いしていたとは思うのですが、やはりその時点ではまだ、「声優」という存在をイマイチ理解していなかったということもあり、正直、よくわからないです。この当時のあなたの代表作の一つとされる「みゆき」は、作品全体から(ていうか、OP映像の時点ですでに)にじみ出てくる「エッチっぽさ」から、我が家では見させてもらえなかったので…(苦笑)。「超時空要塞マクロス」は観てましたが、キムちゃんは物語に大きく絡んでくる方ではなかったので、あまり印象に残っていませんでした。「キン肉マン」も観てましたが、小学生男子の興味の対象は超人たち(特にロビンマスク)であり、ナツコさんをはじめとする女性キャラ達には、あまり目が向いていませんでした。ほんっとーにごめんなさい。

そんな私も、小6から中1ごろにかけ、アニメ雑誌や模型誌等を立ち読みしたり購読したりするようになったことで、「OVA」という、「TVでは放映されない、クオリティの高いアニメ」の存在を知りました。「OVA黎明期」と呼ばれるこの時期には、雑誌の記事を読んでるだけでドキドキワクワクしてくる作品がいっぱいありましたが、その中でも、「幻夢戦記レダ」に関する記事は、「こんな作品があるんだ!どうやったら観られるのかな?ぜひ、観たい!」と、私の心を引き付けて離しませんでした。もちろん、主人公・朝霧陽子のコスチュームが、だんだんと異性に興味を持ちだした少年の心に何らかの影響を与えていたであろうこともまた、否定出来ませんが(苦笑)。

やがて、TVで、「ドラゴンボール」の放映が開始されました。当時の私にとっての週刊少年ジャンプの中心は「北斗の拳」であり、「ドラゴンボール」は、「とりあえず、面白いと思える(飛ばさないで読む)マンガの一つ」だったので、アニメ版も、なんとなく観てました。「常識人(読者・視聴者の化身)」とも言うべきブルマと、「不思議な世界への案内人」である悟空の軽妙なやりとりは、それなりに楽しかったですが。

そして、あなたは、我が生涯初にして究極の萌えキャラ・鮎川まどかとして、私の前に現れました。「キン肉マン」目当てでジャンプを購読し始め、「北斗の拳」に転んだ私でしたが、「きまぐれオレンジ☆ロード」という作品及び「鮎川まどか」というキャラクターもまた、私にとって重要な存在でした。
TV版に先行して製作・上映された「ジャンプアニメカーニバル版」のキャストが同イベント開催前にジャンプ誌にて公開されてましたが、そちらでは島津冴子さんがまどか役でした。当時、「ダーティペア」も大好きだった私は、「ユリの人がまどかを演じてる!」と大喜びしていたので、同誌にて、TV版のキャストが発表された時には、「えっ、島津さんじゃないの?ブルマの人なの…?」と、多少、落胆していました。しかしながら、TV版を観た途端、まさに、「一目惚れ」をした時に感じるのと同様の、痛烈にして甘美なる電撃が、脳天→脊髄→尾骶骨をものすごい勢いで駆け抜けました。まどかが、あなたの声で、主人公・恭介をドキドキさせたり、逆に予想外の出来事に目を丸くして慌てたり、怒ったり、すねたり、恥じらったり、笑ったりする様に、原作を読んでいる時以上に魅了され、「まさに、これこそが、鮎川まどかの声だ!」と確信しました。
前述のイベントには行けなかったので、「ジャンプアニメカーニバル版」を鑑賞したのは随分と後のことになりましたが、島津冴子さんのまどかを「100点満点の100点」とするならば、あなたのまどかは、「100点満点どころではとても評価しきれない」まどかでした。
そうして、鮎川まどかというキャラを通して、あなたの存在は私の中で非常に大きくなっていきましたが、その頃に読んだアニメ誌の記事により、前述の「幻夢戦記レダ」の陽子もまたあなただったことを知り、ますます、同作品への興味も高まりました。

TV版「きまオレ」が放送終了するのとほぼ同時期、「アンパンマン」の放映が開始されました。同作品は、「我が県においては、学校からちょうど帰宅したころに放映していたこと」及び、「アンパンマンにものすごくそっくりなクラスメイトが居たこと(笑)」から、視聴対象年齢ではないのに観てましたが、ここであなたは、あなたの代名詞的キャラクター・ドキンちゃんとして再び私の前に現れました。鮎川まどかとしてのあなたのイメージが固定されつつある中で、ギャグモードのブルマをさらに強調したような演技と、名台詞「バカ、バカ、お・バ・カァァ〜〜っ!」に大いに魅了されました。言われたいです(笑)。

そして進学した私は、学校のそばのビデオレンタル店で、ついに「幻夢戦記レダ」を発見し、レンタル鑑賞するに至りました。同作品の小説版はすでに読んでおりましたが、古代文明と架空の機械が違和感なく入り混じったような世界で魅力的なキャラクター達が紡ぎ出す物語と、思春期の少女の不安定な心理の描写、それを克服し、一歩前へと進みだす姿に、大いに感動しました。でも、陽子は、あんだけ可愛くて、スタイルも良くて、声もセクシーなんだから、コンプレックス抱くこと無いと思うんだけどなぁ…(笑)。
同作品は、パート2の制作も発表されてましたが、結局頓挫してしまったようで、今でも残念に思っています。
ともあれ、「好きな女性の声優さん」として、真っ先にあなたのお名前が浮かぶようになったのも、この頃です。

その他にもあなたは、「聖闘士星矢」、「火の鳥・ヤマト編」、「まじかる☆タルるートくん」、「らんま1/2」、「ツヨシしっかりしなさい」、「GS美神」など、たくさんの作品で私を魅了してくださいました。「らんま1/2」の久遠寺右京と、「GS美神」の美神玲子は、初めて雑誌で見た時に、「姉さまの声が合いそうなキャラだなぁ。」と思ってたら本当にそうなったので、すごく嬉しかったです。
そういえば、’93年の2月ごろ、私は初めて秋葉原に遊びに行ったのですが、とあるゲーム店に設置されたモニターで、SFC用格闘ゲームの「らんま1/2」のデモ画面が上映されてました。当初、同ゲームを買う気は無かったのですが、右京の「あぁぁん…ッ!」という悲鳴を聞いた途端、同ゲームソフトを手に取り、レジに向かって走ってました(笑)。その2年後ぐらいに出た続編においては、さらに色気が増してたように思います。

’90年代終盤ごろは、「○○のお母さん」というキャラが多かったように思えますが、中でも、「アキハバラ電脳組」の雛子ママの、明るく茶目っ気のある言動と、その奥底に潜む、かつて第2子を流産し、子供が産めない体になってしまったという深い悲しみ、それを乗り越えての、周りの人たちへの分け隔てのない優しさは、同作品のテーマであった「優しく、純粋で、愛情を渇望しているがゆえに悪事に手を染めてしまう敵キャラたちと、それを受け入れ、寄り添い、ともに生きようとする主人公たち」の根底をなすものであったと思えました。

2000年代においては、あなたは、どちらかというとアニメよりもナレーターとしてのお仕事を多くなさってましたね。偶然見た番組の中であなたのお声が聞こえると、それだけで幸せな気持ちになれました。
前述のとおり、放映開始時には対象年齢をとっくに過ぎていた「アンパンマン」を率先して観るはずもなく、「ドラゴンボール」に関しては、世間の皆様とは正反対に、「冒険もの」だったころはけっこう好きだったけど、「バトルもの」になってからは全く魅力を感じなくなり、原作はベジータ・ナッパ・栽培マンが出たあたりから、アニメは「Z」開始時から、共に観なくなってしまい、ある意味、あなたのお声を拝聴する機会を自ら放棄していた部分もあります。だからこそ、「楽しむ」というよりは「ノスタルジーに浸る」というほうに重きを置いて観ていた「聖闘士星矢Ω」で、あなたがパラスとして登場してくださった時には、本当にうれしかったです。

「セラフィック・フェザー」のアティム・マザクを演じていただきたかったです。
「RED」のアンジーを演じていただきたかったです。
「3×3EYES」のマドゥライを演じていただきたかったです。
「遥かなるリング」のゼットン河内を演じていただきたかったです。
TVゲーム「超ヒロイン戦記」の続編が出たならば、「幻夢戦記レダ」、「GS美神」、「破妖の剣」などで参戦していただきたかったです。
現在のアニメーション技術で作られた「きまぐれオレンジ☆ロード 〜パニックin銭湯!〜」で、鮎川まどかとして再び現れてほしかったです。
数秒で良いから、直接お話したかったです。

かなり強引な(というより、身勝手な)解釈をさせていただくなら、某アニメ誌の懸賞で当たったあなたのサイン入りテレフォンカードが、私とあなたの唯一の「繋がり」かと思います。私が死ぬときには、棺に入れてもらうつもりです。本当は、鮎川まどかをはじめとするあなたが演じたキャラクター達のフィギュアや、2体ほど持ってるドキンちゃんのぬいぐるみも入れて欲しいけど…、無理だろうなぁ(笑)!

正直、アニメ及びそれに関するもの以外に娯楽らしい娯楽を持たぬ身です。これからも、いろいろな作品を見て、いろいろな声優さんを好きになるでしょう。でも、「My goddess」及び「姉さま」は、あなただけです。

ありがとう、ペリーヌ。

ありがとう、キム。
ありがとう、ナツコさん。
ありがとう、ブルマ。
ありがとう、ジュネ。
ありがとう、テティス。
ありがとう、カジカ。
ありがとう、大綾先生。
ありがとう、右京(うっちゃん)。
ありがとう、のびのびノンちゃん。
ありがとう、恵子姉さん。
ありがとう、美神さん。
ありがとう、雛子ママ。
ありがとう、牛乳のCMのミクちゃん。
ありがとう、ラエスリール。
ありがとう、パラス様。

ありがとう、ドキンちゃん。

ありがとう、陽子。

ありがとう、まどか。

本当に、ありがとうございました。
安らかにおやすみください。
鶴ひろみ姉さま。

 

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